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MTAセメントを用いた歯髄保存治療とは?失敗しないための注意点
当クリニックには「できれば神経を取りたくない」「他院で根管治療をしなければならないと言われた」などのお悩みをお持ちの方が多く訪れます。
その際に当クリニックではMTAセメントを用いた歯髄保存治療をご提案することが可能です。そこで今回はMTAセメントの概要、失敗を防ぐための注意点などをご紹介します。
MTAセメントとは
MTAセメントは1993年にアメリカで開発されました。「Mineral Trioxide Aggregate」の略称通り、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、酸化ビスマス、石膏などが主な成分です。その大きな特徴は、強アルカリ性(PH12)という強い殺菌作用を持つことです。また、口腔内のように濡れた環境下でも硬化する性質を持っています。
「封鎖性に難がある」「生体親和性が低い」「細菌の繁殖する可能性がある」など、従来の歯科用セメントにあったデメリットを解決したのがMTAセメントの画期的な点です。
MTAセメントを用いた歯髄保存治療について
今までの歯科治療においては、虫歯が神経近くにまで到達した場合は、残った歯を守るために神経と血管を抜く必要がありました。このような治療を根管治療と呼びます。しかし根管治療によって歯は守れるものの、歯の寿命自体は短くなることがほとんどでした。これは神経や血管を抜いたことで、歯がスカスカになってしまうためです。
そのような欠点を解決したのがMTAセメントです。歯を削った際、神経が見えてしまっているような状況においても、MTAセメントで患部を封鎖すれば、神経を保存できる可能性が高まりました。
これはMTAセメントに強い殺菌作用があり、封鎖性に優れていることから、虫歯菌が侵入するのを防ぐ効果が期待できるからです。また、穴が開いてしまったり、ヒビが入ってしまったりした歯においても、MTAセメントを用いれば、抜歯を回避できるケースがあります。
MTAセメントのメリット・デメリット
MTAセメントのメリット
・口腔内が濡れている状態でも硬化する
・生体親和性が高い素材である
・強い殺菌作用を持っている
・治療効果を高める保護層が形成される
・硬化するときに膨張するので封鎖性に優れている
MTAセメントのデメリット
・保険適用外の素材である
・長期間利用すると変色する可能性がある
・根管内に入れると後で取り除くのが難しい
・扱いにくい素材のため、十分な効果を得るには経験が必要になる
MTAセメントを利用した治療の注意点
MTAセメントの登場によって、虫歯が神経と血管に到達していた場合でも、歯髄を保存できる選択肢が生まれました。しかし、MTAセメントは全ての症例に対して適用できるわけではありません。一部でも神経が死んでいたり、歯の頭の部分が大きく失われていたりするような状況においては、MTAセメントを利用しても失敗に終わってしまいます。また、このようなわかりやすい状況以外でも、歯髄が保存できるかどうかが微妙な症例も数多く存在します。そこで当クリニックでは、できるかぎり歯髄保存治療の成功率を上げるために、マイクロスコープを用いた精密治療の提供に努めています。
まとめ
当クリニックでは歯科用顕微鏡であるマイクロスコープを用いて、MTAセメントの封鎖性を最大限発揮しているのが強みです。また、細菌の侵入を防ぐためラバーダムを用いて治療の成功率を高めています。そして、どうしても神経と血管が残せない場合は、精密な根管治療を行い、患者様の歯の寿命をできるだけ延ばすことを心がけています。もし他院で歯の神経を抜かなければならないと言われたような状況でも、ぜひ一度当クリニックまでご相談ください。